CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

フロントローディング設計会得は目的ではなく、確固たる商品(製品)開発力を得るための手段の一つにしか過ぎない



■質問■

<前略>

ご無沙汰いたしております。早々の暑中見舞いありがとうございました。いつも年賀と暑中のご挨拶を頂いておりますが、お返事も差し上げず失礼致しております。

ご連絡を差し上げるのは、確か20年以上前になると思いますが、有泉さんが独立開業する大分前に、弊社にご来社頂きフロントローディング設計へのCAE活用に関してのご講演を頂きましたが、そのとき以来になると思います。

さて、弊社でも景気回復のタイミングを狙って一気にダッシュできるよう、有泉さんの暑中見舞いにも書かれておりました、フロントローディング設計手法を短期間で会得しようと考えております。

そこで設計幹部を集めて今後の方針を話し合ったのですが、それぞれが捉えるフロントローディング設計の定義がバラバラでなかなか方向性を定めることができません。

私からは、フロントローディング設計を実現するためには、どこにポイントを置き、設計の進め方をどのように変えてゆけばよいかを考えろと要求するのですが、「設計者達の技術ポテンシャルをアップして、ミスを犯さない設計をさせることが先決だ」とか「設計部全体でそれぞれの設計内容を精査して、事前に問題点を潰し込むことがフロントローディング設計ではないのか」など様々な異論が生じて、その方向性が定まりません。

そこで永年、各所でフロントローディング設計を立ち上げてこられた有泉さんにお尋ねしたいのですが、有泉さんはフロントローディング設計立上げに際して、どのようなポイントに重点を置いて取り組んでこられたのでしょうか。よろしければお持ちのノウハウのさわりだけでもお教え頂きますと、私どもの方針策定のヒントになるのではないかと、お問い合わせさせて頂いた次第です。

尚余談ですが、フロントローディング設計手法を提唱されたのは、有泉さんが最初ですか?20年以上前に弊社で講演頂いたとき、既にこの言葉を用いておられたと思います。その当時日経メカニカルなどにもこの様な言葉は出ていなかったと記憶します。良く聞くようになったのは日産にゴーンさんが来てからだと記憶しますが、この理解で誤りではないでしょうか。社内に向け「フロントローディング設計」とは何かを説明する必要がありますので。

<後略>

■回答■

<前略>

まず最初のご質問ですが、私の先入観から来る理解不足かもしれませんが、皆さんは“フロントローディング設計”を目的にしようとしておりませんか。だからそれぞれが理解する“フロントローディング設計”の定義が異なると、その議論がかみ合わなくなるのではないのですか。

少なくとも私が提唱する“フロントローディング設計”は、最高品質且つ最大効率で商品(製品)開発を実現するための強力な開発組織を作り上げるための手段・手法の一つです。目的はあくまでも強力な開発組織の確立です。その結果商品がよく売れ、事業として大きく利益を生む事がさらにその目的となります。

このような観点から見たとき、お問い合わせの中にもあった「設計者達の技術ポテンシャルをアップしてミスを犯さない設計をさせることが先決だ」とか「設計部全体でそれぞれの設計内容を精査して、事前に問題点を潰し込むことがフロントローディング設計ではないのか」なども、強力な開発組織を確立するために必要不可欠な取組です。

しかしあれもこれも一気に片づけようとしても、限られたリソースでの取組では、虻蜂取らずの結果に終わる危険性が高くなり、どうしてもそれぞれの取組に優先順位を付けて取組必要性が生じて参ります。

貴社の現状は、“フロントローディング設計”と言う言葉だけが先走りをして、強力な開発組織を確立するために、いかなる取組を行うべきかの洗い出しや、その優先付けが全くできていない状況と診ました。

貴社にまず必要なことは、強力な開発組織を確立するためには、今現在の貴社で何が問題で、その悪さ具合が如何ほどなのかの洗い出しだと思います。これが適切にできれば自ずと取組べき方向性やアイテム、又その優先順位も自ずと定まってくるはずですから。

参考に、私が支援先でフロントローディング設計の意義を説く際に用いる説明ポイントを下記致します。以下のポイントや上記致しました観点でフロントローディング設計を捉えて頂いた上、貴社の現状を把握されるとより的確な把握が叶うと思います。

尚私共にご依頼頂ければ、過去160件を超える実績に基づきました、現状診断を差し上げることも可能です。

フロントローディング設計の目的

閲覧限定会員募集中





二つ目のご質問ですが、“フロントローディング設計”を最初に提唱したのはたぶん私だと思います。20年前、「フロントローディングに物事を進める」「フロントローディングな設計アプローチを行う」等の言い回しを用いていた方はおったと思いますし、当時勤務していた会社に商品を供給していたSDRCのコンサルなども、CAEの効果を語る場面でこのような言い回しを用いていたと記憶します。しかし私以外には、“フロントローディング”を頻発していた方は、私の知る限りいなかったと思います。

世の中に“フロントローディング”又は “フロントローディング設計”が一般化したのは、ゴーンが来て、ゴーンが頻繁に用いたからだと理解しております。





参考@

弊社本年度の暑中見舞い