CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

技術情報共有化の取組みについて(既存情報の整理、暗黙知の引きだし、活用態勢の確立)


■質問■

<前略>

先日はお忙しい中、又ご縁路ご来社頂きましてありがとうございました。

参加者一同、先生の取組んでおられます、開発・物づくりの現場に根ざした、的を射た取組みに、驚き賞賛すると共に、今後我々の取組むべき道筋を、明確にして頂いたことに深く感謝しております。

さて、当日時間切れのため、お聞きできなかった質問事項が、弊部(技術管理)部長よりございます。あの席では、「主催者の立場として、質問を他の参加者に譲り、自分の質問は後回しにしていたら、時間切れになってしまい、聞きそびれた、料金外になってしまうが、是非先生に補足のご説明を求めろ」との指示でございます。

内容的には、当日の趣旨とは若干外れていたため、私の方からお願いして説明を省いて頂いた、技術情報共有化の件です。

恐らく先生のお書きになられている書籍などでは、ご説明なされておられると思いますので、どこに書いているかでも構いませんので、既存情報の整理、暗黙知の引きだし、それらの活用態勢も含め、どこを読めばよいかでも構いませんので、お教え願いますと幸いです。

なお、先生へのご支援のお願い、早速来期予算に盛り込むよう、技術のトップからは指示されております。

<後略>

■回答■

私共のご活用、ご検討頂きましてありがとうございます。

ご質問の件、簡単にご説明すると共に、弊社ホームページなどお読み頂く箇所を、お答え致します。

私は、開業以来20年にわたり多くの製造業において、その商品開発現場における、技術情報の蓄積度合いや活用状況を、具に見て参りました。そして多くの製造業におけるこれらの技術情報の形態は、以下の3タイプに分類できることを把握しております。

先ずは、その昔から蓄積されてきた紙の情報があります。紙と言っても、私がおじゃまするような勝ち組企業様の場合には、これらがそのままバインダーにファイリングされて、書架に並んでいる例はほとんどありません。古い資料類は、マイクロフィルムで、少し前の物は、光ファイルで、最近ではTIF様式などに変換されたイメージファイルでのデジタル保管が一般的です。

中には、未だに設計者達が、過去の技術資料や開発資料を、バインダーファイルに綴じられ保管されている書庫に、頻繁に出入りしている例もないわけではありませんが。

2番目は、最初からデジタルデータとして作成された、技術資料の数々です。今から遡ること15年、Windows95と共に我が国の製造業は、一気にIT化いたしました。それまでにも、1970年代から80年代にかけてのEDP化の波で、部品構成表(BOM)や設計変更通知書が、まずデジタル化されており、2次元CADの普及により、図面データがデジタル化される様にはなっていましたが、殆どの技術情報は、紙の情報であり、図面などは、プロッタで印刷された紙情報を、原図として扱う方法が一般的であったはずです。

しかし一気にIT化したからと言って、パソコン上に作成された数々のデジタルデータを、関係者が遍く共有できて、有効活用できる状態になっているかというと、必ずしもそうともありません。ノーツなどのツールを用いて、共有すべき情報の一元管理を本格的に始めてから、未だ10年に満たない製造業が殆どと言っても良い状態です。

さらに、この一元管理が本当に役に立つ形での管理になっているかというと、必ずしもそうとは言えません。その一部の情報しか共有できていない事実が少なくありません。

3番目の技術情報は、極めてやっかいな代物です。それは、前に挙げた2つの情報に括ることのできない、その存在の有無も定かでないような情報です。

歴史の長い製造業ほど、固有技術と呼ばれる、代々継承されてきた(されてくるべき)技術が、沢山存在します。しかし多くの製造業において、これらの技術が持つ理論的な背景や、設計の意図がいつの間にかうやむやになってしまい、巧く継承出来ていないケースが驚くほど多い実態があります。

そして多くの製造業に置いて、これらの技術情報が、全く整理共有化されないままで、ただ放置(乱雑に格納・属人的な物は霧散)されている事実があります。もしかしたら貴社にも当てはまるかも知れません、その場合は、早急に共有化の体制を確立する必要があります。

このあたりの詳しい話は、日刊工業新聞社から刊行されております「機械設計」誌に連載した「グローバル競争を勝ち抜く “攻め”の設計改革講座」中で、下表のよう6号連載で解説してありますので、是非ご参考にしてください。

また私どもの会員ページには、2007年8月17日〜2007年10月26日までの連載で、近い内容の解説を「「ナレッジ改革」 暗黙知の形式知化と技術情報の共有化に向け」というタイトルで、11連載で掲載してあります。しかし生憎貴社は、弊社ホームページの会員ではありませんし、貴社の皆さんの中にも、弊社ホームページの閲覧会員は、居られませんので、ご覧頂けません。

もし貴社内で「機械設計誌」の該当バックナンバーが見つからないときには、**さんには、是非閲覧会員のご登録を頂き、お読み頂けますようご提案申し上げます。



「機械設計」誌掲載箇所
掲載号
掲載回数 タイトル
2006年6月号 第十二回 「ナレッジ改革の取組み方」
2006年7月号 第十三回 「技術情報の共有化と活用ナレッジ改革の取組み方」
2006年8月号 第十四回 「技術情報の整理体系化とシステム構築」
2006年9月号 第十五回 「”暗黙知”の形式知化(1)」
2006年10月号 第十六回 「”暗黙知”の形式知化(2)」
2006年11月号 第十七回 「ナレッジデータとなる設計思考展開表の作成」