CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

CADをクラウドサービスに移行して大丈夫か




■質問■

<前略>

ご無沙汰させて頂いております。恐らく先生のご記憶には無いと思いますが、二十数年前、先生が未だ独立される前に、CAE活用などでご支援を頂いておりました、株式会社@@@の**です。

先生が独立なされてから、季節毎上層部に届く挨拶状や、セミナの案内などを拝読して、先生にご支援をお願いしようという声が、関係者中でたびたび上がったのですが、以前先生がおられた販社とのかねあいもあり、結局今日まで先生とコンタクトを取らせて頂く機会も無く過ごして参りました。

しかし先般、先生が機械設計誌に掲載されました、「特集 設計環境を変えるIT活用最前線「多様化する設計支援ツール活用のポイント」」を拝読して、お問い合わせをさせて頂きました。

以前先生がおられた販社と、何かと深い関係にあった先輩達も、それぞれ定年退職などでおらなくなり、不詳小生が責任者の立場になりましたので、今後おつきあい頂けますことを期待して、不躾な質問をさせて頂きます。

さて、数ヶ月前から某販社より、CAD環境のクラウド移行を提案されております。先生が書かれておりました、クローズしたクラウド環境ではなく、販社の提供するクラウドサービス上での利用です。

販社のセールスやコンサルタントには、先生の記事を示して、「セキュリティへの不安が解消できない限り、安易にクラウドへの移行はできない、費用の問題ではない。」と却下するのですが、あれこれと反論を繰り返して、しつこく迫って参ります。弊社のIT関連が、この販社に負んぶに抱っこの状態にあるため、敵もなかなか引き下がりませんし、IT統括の役員を使って圧力を掛けてくる始末です。

尚、敵の反論は、「クラウドサーバは、国内で設置・運用しているため、先生が列記している危険度が大幅に低い」「クラウドサーバの管理要因は、社員もしくは関連会社員が受け持つため、先生が心配されるようなことは起こりえない」などです。

確かに、信用がおける我が国企業が提供するクラウドサービスなら、チャレンジしても良いのかなと言う迷いもあり、先生のご見解を賜りたく、お問い合わせをさせて頂きました。

<後略>

■回答■

**さん、お久しぶりです。
うるさい先輩達に遠慮しながらも、要所要所で鋭い質問を発しておられたことを、よく記憶しております。

さて、ご質問の件ですが、ご案内の販社なら、企業体質などには少々難はありますが、チャレンジして見る価値はあると思います。ただし、もしトラブルが起きたときの損害賠償や、緊急対応などをしっかり契約書に認めたうえでと言う条件が付きますが。

具体的には、貴社図面情報やBOM情報が、貴社が用いているクライアント端末以外から漏洩した場合の損害賠償義務を明記し、賠償額は、原則上限を設けず、貴社の根拠に基づいた産出額に従うことを明記した内容がベストです。恐らく、貴社の図面一式が、中国企業に漏出して、紛い製品が全世界にばらまかれることを想定すると、その損害賠償額は天文学的数字になり、クラウドサービス提供販社も、二の足を踏むのではないかと思いますが。

一方、貴社が用いているクライアント端末からの漏洩は、貴社社員や貴社端末に触れる機会がある派遣社員などが犯すこともできるため、クラウドサービス提供者には、その損害賠償を要求できないだろうし、貴社社内の現状システムでも、同じ問題は起こりうるため、当然の事として除外すべきです。

しかし、何らかの手段を用いて入手した、貴社クライアント端末のID及びパスワードを用いた、なりすまし的な漏洩については、損害賠償対象とすべきと考えます。この防御は、クラウドサービス提供販社とよく調整・工夫する必要があると思います。

あと、本年6月に、ヤフー系のファーストサーバーから、5600社分のデータが消失した事件がありました。このようなケースでも、データ消失を発生させない、データバックアップ義務を、クラウドサービス提供販社に課す事も必要です。5分おき、10分おき自在にミラリングバックアップが設定できる時代ですから、販社との工夫次第でこの問題はクリア可能と考えます。


会員の皆様に)

本文中にあります私の執筆記事、「多様化する設計支援ツール活用のポイント」を、来週より連載で掲載致します。