CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

3次元CAD活用を活性化するためにPro/ENGINEER(Creo Elements/Pro)を SolidWorksに乗り換えたいのだが




■質問■

<前略>

初めてお問い合わせをさせて頂きます。私は**株式会社で設計部門の責任者を務めております@@と申します。弊社の粗忽さを晒すようで、全くお恥ずかしい話ですが、貴ホームページのコラム「皆さん巧く3次元CADを活用できていますか?」「世の中はそれほど3次元CADが巧く使えていないのか!」「長年使い慣れたPro/ENGINEERを他のCADに統一しろと言われ困っているが」などを拝読して、お問い合わせをさせて頂きました。

上記コラムで紹介されている製造業さん達とは、弊社の状況は全く異なると思いますが、我々の今後取るべき方向性につきまして、ご助言賜れますと幸いです。

弊社では2000年以前から3D CAD導入の検討を行い、同年にはPro/ENGINEERの導入を始めました。Pro/ENGINEERを選んだ理由は、当時最も評価が高く実績があるCADと検討メンバーたちが判断したからです。

しかしとは申しても、私自身は当時開発設計チームのリーダだったため、日々の開発業務に追いまくられ、殆ど受け身の状態で、推進チームが打ち出してくる方針を、受け入れている状態でした。このため、どのような根拠で、上記決定を下したかなど、一切不承知です。

今春上記の立場に就き、常々感じていた3D CADの重荷感や、役立たず感を解明すべく、当時の検討資料を、現在の推進チームに後追いさせました。

まずは3D CADの導入への目論見に、一般論の絵空事的なメリットは満載でしたが、弊社の設計部署や設計業務に、具体的にどのようなメリットがあるかが、殆ど示されておりません。恐らくそのような視点で弊社の設計業務を掘り下げた形跡もなく、「他がやっているから家も乗り遅れてはなるまい!」的な動機が主たる物のように感じました。

既に当時の責任者は定年退職をしており、メンバー達も総入れ替えの状態ですので、当時の状況を聞き取りすることもままならず、全ては闇の中の状況でした。

幸い、当時の責任者が近所に住んでいるため、休日に近所の居酒屋に誘い、当時の顛末を聞き出す事が出来ました。

結論的には、トップダウンの鶴の一声で、Pro/ENGINEERの導入ありきの検討だったようです。ですから導入メリットなどはどちらかと言えば、後付的な作文という始末で、「サラリーマンだから、長い物には巻かれるしかなかった」との呟きが、痛く心にしみました。

このような経緯で、この5月より半年掛け、現在の推進チームに、現状における3D CADの活用状況(投資対効果も含め)、現状における課題、課題の解消手段などの検討を命じました。

その結果、投資対効果が弱いと言う結論から始まり、3D CADの操作を殆どオペレータが担っており設計の道具になっていない、CAEなどを用いたフロントローディングに結びついていない、など数々の問題点が列記されました。

そしてその解決案として、設計者自身が道具としてより用いやすいSolidWorksに、乗り換えるべきだと言う提言が彼らからなされた次第です。

しかし正直なところ、投資対効果の弱さや設計の道具になっていなさは、CADの問題ではなく、設計者の質や仕事の進め方に悪さの根元があると、常々感じており、「世の中はそれほど3次元CADが巧く使えていないのか!」にある、先生の「“たかが道具”」というお言葉に、今後の我々が取るべき方向性にご助言を賜りたく、お問い合わせをさせて頂いた次第です。

<後略>

■回答■

@@さんは、既に本質部分をご理解されているようですから、その“正直なところ”を部下(推進チーム)に伝え、検討をやり直すように指示を出すべきだと考えます。何処でも同じなのですが、貴社にも“道具ありき”の傾向が見て取れますので。

そして、再検討を行う前に、推進メンバーの皆さんには、私のホームページにあるコラムを、洗いざらい読み、メンバー皆で輪講を行うよう指示を出されると良いと思います。@@さんも時間的に余裕があるときには、それに参加されるのも良いと思います。

私のホームページには、私が20年以上、各所の取組で会得してきた様々な留意点やコツが紹介されておりますので、貴社の今後の取組に必ず役立つと思います。

また当然のことですが、ご依頼頂ければ喜んでご支援申し上げる事も吝かではありません。


追伸)

ただし、SolidWorksに乗り換える事を、端から否定した形での再検討はさせないでください。あくまでも選択肢としては、残す姿勢での取組みをお勧め致します。

可能性として、SolidWorksに乗り換えるほうが、設計者が自身の設計ツールとして3次元CADを駆使できる、より効率の良い設計作業が可能となる、乗り換え費用を鑑みてもコスト的に有利である、などのメリットが生ずる可能性もあります。これはこれまで私が手がけた様々なケースの中で、少なからずこのようなメリットを、見いだした例がありましたので。

そこで、今後行うべきだとお勧めした再検討では、まずは現有の道具で何とか出来ないかを、徹底的に検討することを第一優先で進めてください。

そしてその上で、Pro/ENGINEERを用いていたのでは、仕切り直おしが難しい、不可能だ、という可能性が強く出てきたときに、はじめてSolidWorksに乗り換えることを選択肢に加え、検討を進めるべきだと考えます。

ご説明はありませんでしたが、恐らくご様子では、Windchillを用いたPDMシステムなどにも大枚を費やされていると思いますし、Pro/Eに費やした費用、使用技術を会得するための費用など、この十年余り貴社は、3次元CADのために膨大な費用を費やしてきたと思います。

ですから、貴社の場合にはなかなかSolidWorksに乗り換えることで、大きなメリットを見いだすことは難しいと思います。

SolidWorksに乗り換える選択肢は、これまで費やしてきたコスト、これから費やすコスト、得られるメリットなどを、定量的且つ徹底的に、振り返り検証及び予測検証した上で、分がありそうだと思われるときにだけ、踏み込める選択肢だと考えます。

当然、現有の道具が、設計の質や効率を妨げており、どうしてもその回避が困難と判断される場合には、これまで投下してきたコストをドブに捨てるという選択も、当然頭の片隅には残しておくべきですが。

いずれにしろ“たかが道具”です。ポイントは、道具に何を用いるかではなく、貴社が現状でどのような問題を抱え、それをどのように解消して、如何なる設計態勢、製品開発態勢を目指すかのはずです。