CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

フロントローディング設計が実現できるCAE活用術(その5)



(6月30日に戻る)

第1章 フロントローディング設計とCAE

フロントローディング設計(開発)へのチャレンジ及び成果(期間・開発費用面から)



図6 A社におけるフロントローディング開発(設計)導入の成果


図6に示すグラフは、上記A社で10年以上前に実際に計測された結果である(機密の問題があるのでプロット内容は大幅に弄ってあるが)。開発対象はメカトロ製品で、その商品特性にメカ部分の要素がかなり大きな割合で占めるような製品である。従来の平均開発期間は約2年掛かっていた。

緑線のグラフは、設計改革無しの従来アプローチで行った実績データだ。横軸に開発期間(全幅約2年)、縦軸に開発費用((開発に費やした全工数*時間当たり単価)+部品代などの全費用)を取っている。

取組前のアプローチでは、試作平均回数3回、開発期間2年が平均的な流れで、一回目の試作以降に全体期間の2/3以上を費やしていた。

そして筆者たちが取り組んだプロジェクトの成果を赤線グラフで表す。試作が一回で済み、その開発費用期間とも大幅に減少している事がご覧いただけると思う。期間で約半分の1年弱、費用では1/2を大きく超える大幅費用削減を実現している。

この取組を筆者たちは「フロントローディング設計」「問題を先送りしない設計」・・「しっかりした構想設計を行う設計」と名付け、構想設計段階からの徹底した設計検討を実現した。この徹底した設計検討の一つの柱は、IT設計支援ツールを徹底的に活用した仮想試作・仮想試験の実現である。

ここで行った仮想試作・仮想試験には、3次元CADを用いた組立性や、整備性の検討、統計的品質管理手法、品質工学手法を活用したアプローチなども当然含まれるのだが、その多くは様々な手法やCAEツールを用いたシミュレーション主導型のアプローチであった。

筆者たちは、この取組に4年を掛けた。ところが実線グラフで示した期間はたったの1年だ。残りの3年は何処へ行ったのか誰もが疑問に思うことだろう。実は、実線グラフのプロジェクトを始める前の3年は、仮想試作・仮想試験の準備期間であった。仮想試作・仮想試験に耐えうる、対象商品が持つ固有技術の形式知化、対象機械の原理原則の究明、それを元に予測型設計に用いるための、“ひな型モデル”の確立・検証等、前もって準備すべき膨大な作業があったからだ。これらを地道に積み重ねていた期間が、その3年間である。

参考までに、図6の白線グラフの説明を補足しておく。これは、筆者たちが取り組む1年弱前に計測された、3次元CADだけを導入した取組の成果だ。この3次元CADは計測時点から遡ること4年前に導入が始められ、3年以上の活用を模索した結果のグラフだと理解いただきたい。しかしその成果は、確かにそれなりの期間短縮や費用低減がはかられてはいるものの、画期的な成果とは言い難い結果であった。

少なくとも当時の経営者達に、投資対効果としては評価すべき点がないとの結論が下された取組であった。ただ単に、漫然と3次元CADだけを導入し展開しただけでは、この様な事態に落ち込む確率が極めて高いとご承知置き願いたい。



(7月14日に続く)