CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

我が社でも1年以内でフロントローディング開発体制構築が可能か



■質問■

<前略>

11月14日の記事を拝見してお問い合わせさせて頂きます。

急激に業績が悪化し、速やかなる対策を求められている弊社では、我々開発部隊に対しての緊急課題として、製品開発におけるフロントローディング化を求められております。

昨夏以降外部コンサルなども入れた様々な状況分析の結果、製品開発段階での足踏み(設計・試作の繰り返し)、量産投入段階での足踏み(スムーズに量産が立ち上がらない)がやり玉に挙げられ、「1年以内に解消しろ」との厳命が下されました。

一方、開発部門を預かる私としては、我々が現役の頃に比べ異常に多い開発段階での設計手戻りを問題と感じ、兼ね兼ねこれを潰さねばうまくないと言う意識のもと、この5年来、機会あることに部門目標にはその解消を掲げて参りました。

しかし押し寄せてくる開発案件をこなしてゆくためには、試作開発段階での手戻りを潰し込むための、考えられる手だてを打つ余裕すらなく、現在に至っている状況です。

そこでご質問ですが、弊社のような状況から、短期間で設計手戻りや量産投入段階での滞りを解消した、フロントローディング開発体制構築が可能な物でしょうか。大幅に開発アイテムを削減したため、設計者の余力は充分あると思いますので、思い切った人海戦術も可能だとも考えております。このような前提でいかがな物でしょうか。

<後略>

■回答■

はっきり言って何ともお答えしようがありません。

提示頂きました情報では、貴社の製品開発段階において滞りが起きて、それが問題視されていることは解りますが、問題の滞りを起こしておる原因に全く言及されていないため、フロントローディング開発体制確立に、どれだけの時間が掛かるか見積もれと言われても、何とも読みよう(見積もりようが)がありません。

もしかしたら大きな誤解があるのかもしれませんが、フロント ローディング開発体制確立は、一朝一夕で叶うような簡単な取組ではありません。

私どもは、開業以来約17年間、様々な製造業様とフロント ローディング開発体制実現のために取り組んで参りましたが、極めて優秀な人材のそろっておりますトップクラスの企業でも、一筋縄で行くような簡単な取組ではありませんでした。

そもそも弊社が手がけますフロントローディング開発体制確立の為の取組は、業務をフロントローディング化することが目的ではなく、製品開発の効率を妨げている様々な問題点を、一つづつ解消してゆく取組が目的です。その中で、トータルとして“先手を打った手当”“問題発生を予見し先手を打った対策”が最も効果的であると言う、結果としてのフロントローディングな取り組です。

ですから私どもが、フロントローディング開発体制確立の為のご支援を申し上げる際には、必ず私どもの手で“現状診断”を行わさせて頂いております。貴社のように既に何処かのコンサルの手で状況分析などが行われている場合でも、一般的には改めて私どもの手で行う“現状診断”を受診頂いて参りました。

なぜなら、既に貴社がお受けになった状況分析は、あくまでもassessment(評価・査定)の範疇での現状分析であり、何が悪くてどのように直せばよいかまで踏み込んで居らない筈です。

お問い合わせ頂いた、フロントローディング開発体制確立は、貴社の製品開発の効率を妨げている様々な問題点を明確にして、それぞれに優先順位を付け、一つづつ的確に解消してゆく取組が求められているはずです。

そしてこのためには、起こっている「製品開発段階での足踏み(設計・試作の繰り返し)、量産投入段階での足踏み(スムーズに量産が立ち上がらない)」だけを問題視するのではなく、具体的に何がそれぞれの現象の中で生じており、何故その問題が生じるのかを、まずは的確に把握しなければならないはずです。

その上で、それぞれの問題を生じさせている原因を取り去ったり、起こさないような仕組み作りを講じることで、初めてそれぞれの問題点を潰し込むことができるわけです。

余談ですが、私どもの“現状診断”は、まさにこれらの問題点を潰し込むための、単なる評価・査定だけではない、医者が病気の患者さんに行う診断行為そのものであり、病気の原因や適切な治療方法まで明確にすることを目的としております。

一方、私が各所で紹介している様々なフロントローディング設計実現方法やフィジビリティースタディー「設計思考展開」(DPD)などは、上記した問題点を潰し込むための一手段であり、一手法にしか過ぎません。病気の患者さんを医者が治療する際の、治療方法の選択肢の一つにしか過ぎないわけです。

しかし、もしかして**さんは、これら手法の導入とルール作りを行えば、フロントローディング設計体制がスタートでき、後は設計者達の創意工夫でうまく作り上げろと言う腹づもりではありませんか。もしそうだとしたら、大きな思い違いをなされております。

ことフロントローディング開発体制確立の為の取組は、CADなどの道具の導入や、品質工学のような考え方や手法の導入だけお膳立てしてやったら、「あとは君たちうまく使え!」方式では到底実現不可能な取組です。

このあたりを良くお考え頂き、一度弊社においで頂くことをお勧め致します。半日程度でしたらコンサル料金はサービスさせて頂きますので。